大型出力屋の印刷・後加工技術
2020.08.23
こんにちは、ホーコーズの竹澤です。
弊社のワイドフォーマットプリント事業では、大判サイズに対応したインクジェットプリンターを導入し、印刷をしています。
インクジェットプリンターで使用するインクには、種類や性質に違いがあります。
弊社では、商品の使用用途や環境に応じて、最適なメディアと、それに適したインクの使い分けをしています。
今回は、インクジェットプリンターのインクの種類と、色についてご説明します。
インクジェットプリンターで使用するインクの主な成分は「着色剤(色素)」と「溶剤」です。
この着色剤と溶剤の種類によってインクの種類が変わります。
着色剤(色の原料)は、「顔料」と「染料」に分けられます。
顔料は、水や油に溶けず、印刷用紙の表面に定着させることで着色します。
染料は、水や油に溶け、印刷用紙にしみ込んで染める性質を持ちます。
簡単に図で表すとこのようなイメージです。
顔料インクは、塗料の粒子が大きく、粒子が溶け切っていないインクになります。紙の表面に付着するので、滲むことなく印刷ができます。メリットは、文字や色を鮮明に写し出すことができる点です。例えばテキストやグラフなどをくっきり見せたい場合は顔料インクがおすすめです。染料インクと比べると耐光性・耐水性・保存性に優れています。
染料インクは、塗料の粒子が細かく、紙の繊維の内部まで浸透します。メリットはインクが発色がとても鮮やかで、クリアな仕上がりとなる点です。紙に染み込む特性から、光沢紙などでは光沢感を失うことなく印刷でき、写真の印刷に向いています。顔料インクと比べると印刷スピードが速いですが、インクが乾くまでに時間がかかります。光や水に弱いこともあり、使用する場所には注意が必要です。
溶剤は、「水性」と「油性」の2種類に分けられます。乾燥時に水分が揮発するものは水性インクで、有機溶剤が揮発するものは油性インクです。水性インクの方が鮮やかな色彩の表現ができ、においが少なく環境に良いです。対して油性インクは水性インクに比べて耐候性が高いですが、においが強く換気が必要です。また、揮発するまでに1日程度時間を要します。
インクには、上記のように大きく種類が分けられ、それぞれ専用のインクジェットプリンターを使用して印刷を行います。
色の再現方法には、大きく分けて「CMYK」と「RGB」の2種類があり、
インクジェットプリンターでは「CMYK」が採用されています。
「CMYK」とは、減法混色に基づく色の表現方法で、「シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック」の4色で構成されています。なお、語源の話となりますが、「K」はBlackのKではなく、画像の輪郭などを表現するために用いられた印刷板「Key Plate」の頭文字の「K」です。
対して「RGB」は、加法混色に基づく色の表現方法で、光の三原色です。
パソコンのディスプレイでは画面から光を発しているので、光の三原色RGBが使われます。そのほか、スキャナーやカメラも光を扱うので、RGBです。
CMYは色素の三原色であり、上画像のように3色重ねると黒が作れることが分かります。
しかし、理論上は黒でも、3色のインクを混合してきれいな黒を作ることは技術的に困難であり、鈍い暗色にしかなりません。また、カラーインクを重ねて印刷するとコストがかかります。
上画像を見ると、黒色に大きな差があるのが分かります。Kを使うことでインクのコスト面や黒の見映えが向上します。
黒の表現には、「スミベタ(K100%)」と「リッチブラック(CMYK4色の掛け合わせ)」と「4色ベタ(CMYK100%)」の3種類があります。
リッチブラックとは黒1色だけではなく、他の色を混ぜて表現した黒色を指します。例えば一般的に推奨されているリッチブラックの比率(C40%/M40%/Y40%/K100%)のように、CMYをプラスして設定すると、締まりのある黒に仕上がります。
リッチブラックより、更に濃い黒を表現できるものが4色ベタです。しかし、インクを大量に使用することで印刷した用紙同士がつきやすい点や、乾きが遅くなる点などがあります。また、黒が濃すぎて用紙の裏面に映って見えてしまうこともあるため、印刷ではあまり推奨されていません。インク量の合計を考えながら、適正な黒の表現を行う必要があります。
ここまで、インクとCMYK、黒の表現についてご紹介しました。印刷素材や使用する場所に応じて、顔料や染料、水性や油性といったインクを適切に使い分ける必要があります。
弊社の出力担当者は、データごとにインクの種類やインク使用量を変えて、常に美しい仕上がりになるように心がけています。